(続き)【書評】国債暴落 日本は生き残れるのか
ひとつこの本が提起している素敵な論点を書き忘れていた。
それは第1章の始めに書かれている。
「なにをもって暴落というのか」がそのポイントである。
「国債暴落」が
日本政府の完全な財政破綻を示しているのか
それともある証券価格の大幅な下落にすぎないのか
で話は大きく変わってくるだろう。
筆者(私)はいまだに前者を想定できずにいる。
筆者がテール・リスクとして考えているのは後者である。
筆者が考える「国債暴落」とは
インフレ率が2%を大きく超え
長期金利が4%前後にまで上昇する
ような現象を考えている。
換言すれば、
長期金利が3%ほど上昇すること
である。
長期金利(10年もの)が3%上昇するとは、残存10年の普通国債の価格が3割下落するということだ。
長めの国債を保有するタイプの金融機関(地方銀行、年金、保険、そして日銀)のバランス・シートは時価ベースで無視できないインパクトを受けるだろう。
もちろん、会計上は「買いきり、満期保有」として、含み損を実現することはない。
しかし、実質的にはこれら金融機関の財務体質は打撃を受ける。
会計上の言語で言うなら、その後、償還を受けるまで長い間、低利回りの資産を抱えることとなる。
高田氏の著書では、政府・日銀はこのような事態をFinancial Repressionでしのぐと書かれている。
それが可能であるかどうか、筆者には定見がない。
これが筆者の考える「国債暴落」である。
そのため、筆者は「暴落」という言葉よりも「急落」という言葉を好む。
起こりうる国債の急落は決して「暴」ではない。
オーバーシュートもあろうが、「調整」に過ぎない部分も大きいのではないか。