【書評】貨幣という謎 金と日銀券とビットコイン

北海道大学経済学部の西部忠教授が書いた本。
幅広いトピックを集め、肩のこらない読み物に仕上がっている。

さまざまな分析がよく知られた例を使って語られる。
たとえば、国家によらない通貨の例として
 ・擬似通貨「円天」
 ・ビットコイン
の違いを述べる。

円天が無限連鎖講とされなかったことへの分析は鋭い。
円天は永遠に入会者がいなければ成立しえないスキームではなかった。
円天という通貨は超インフレによって成立しうる通貨だった。
しかし、超インフレが起こらないかのように誤解を与えたことが詐欺とされたのだとした。

一方のビットコインはデフレ通貨だ。
通貨発行量に上限があることが増価の要因となり、ビットコインの経済は強烈な引き締め状態にある。
西部教授はこうした点を問題点としながらも、ビットコインそのものへは高い期待を抱いているように読める。
時として道をはずす中央銀行の発行通貨より、仮想通貨の方がましな点も多いとの思いだろう。

西部教授はバブルについても楽しく語っている。
 ・チューリップ・バブル
 ・ルイジアナ会社
 ・南海泡沫事件

なぜ貨幣の本でビットコインとバブルを語ったのか。
いうまでもなく、各国の量的緩和政策への非難であるのだろう。