【書評】 国も企業も個人も今はドルを買え!
「オオカミおじいさん」こと藤巻健史参院議員による投資推奨の本。
日本における終末論者の代表格である藤巻氏だが、その論旨に全くブレはない。
円危機・国債急落の引き金
円・国債暴落というハードランディング「Xデー」は近いとし、そのための備えを勧める。
Xデーの「引き金」として7点挙げている。
- 日銀の物価目標の達成が近づく
- 原油のトレンド転換
- 資産価格の急騰
- 日米金利差の拡大持続
- 国債保有へのBIS規制
- 長期国債入札のテール拡大
- 経常赤字の恒常化
初めの3つは物価上昇にともなう金融政策の変更にかかわるもので、いわば日本版テイパー・タントラムと言えるだろう。
4つ目が為替要因。
5-6つ目が国債売りのリスク。
7つ目がISバランス、つまり、国債売りと為替の要因だ。
Xデーに備えるポジションとは
こうした引き金により市場の潮目が変わり、Xデーがやってくるという。
そうしたリスクを抱え、藤巻氏は
今は「守りのスタンス」に徹する時期
と説く。
推奨する金融商品は
- ドル(ドル建てMMF、短期債)
- 債券ベアファンド
である。
ドルは安全通貨か
米ドルを持つべきというのは現実的な落としどころだろう。
もっとも、米国は双子の赤字の国だから、戸惑いもある。
Euro Pacific CapitalのPeter Schiff氏は米国版「オオカミおじいさん」だが、シフ氏は米ドル危機・米ソブリン危機の到来を予想し、外貨と金を顧客に売り込んでいる。
藤巻氏のシナリオとは真逆である。
一方、ジム・ロジャーズ氏は、次の危機で米ドルが急騰し、その後に金が急騰するシナリオを提案している。
この見方は藤巻氏と同じだが、その後の展開には要注意だ。
ロジャーズ氏は、その後ドルが凋落していくと見ているが、藤巻氏は長いホライズンへの言及がない。
(次ページ: ハイパーインフレは本当に不可避なのか)