【グラフ】東証一部のCAPE
しばらく日本株のCAPEレシオを議論していなかったので、久しぶりに取り上げておこう。
最近の日本株についてCAPEもPERもそこそこ安定して推移している。
まずは1990年以降のPER、CAPEレシオを概観する。
東証一部の単純株価平均、PERとCAPE
いつものことだが、たいした新発見はない。
ここから読むべきは
- 1990年頃のバブルから日本株の株価は長い間をかけて下落し、2012年頃ついに底をうったように見える。
- PERは1998年アジア危機、2000年ドットコム・バブル、2008年リーマン危機の前後で計算不能となった。
EPSがマイナスになったためだ。
日本企業の収益は海の向こうのイベントの影響を受けやすく、その下げの度合いは米企業以上だ。
(同時期S&P 500のEPSはマイナスになっていない。) - CAPEレシオはそうした極端な値を含むEPS平均で株価を割っており、CAPEにはその影響が長い間及ぶ。
結果、このレシオのメッセージは少ない。
次に近時をクローズアップしてみよう。
東証一部の単純株価平均、PERとCAPE(近時)
今後、EPS平均の対象からリーマン危機後の2009年のマイナスのEPSが外れていき、EPS平均には改善要因として働こう。
以下は仮定の上での推論だ。
仮に日本株のCAPEレシオに意味があるなら、CAPEには中央回帰の性質があり、そこそこ安定すると期待される。
(PERより安定しているのは事実だ。)
そうだとすると、これから起こりうることは2つ:
- EPS平均が上昇、CAPEが安定することで、株価は上昇する。
- EPS平均が上昇しない、つまりEPSの急落が再び起こる。
前者の場合も、じきにEPS平均が下落に向かうというのがCAPEレシオの想定だ。
それを回避できるかは、日本株の収益体質が改善したか否かによる。
海外の市場・経済の影響を受けにくい収益体質になったか、極端なEPS低下が起こらない体質になったかによる。
そこが見えない現時点では3月末のCAPE 21倍、PER 20倍は警戒を解くべきでない水準と言うべきだろう。
結局は海外市場次第の日本市場という話になる。
(参考)本分析は東証一部銘柄を対象として行っている。
新興市場を含めると株価倍率は大きく変化し、逆に読み取れることが減ってしまう。
ちなみに、3月末のマザーズのPERは111倍である。
阿久津 り子 大手電機メーカー、公的研究機関にて電気・電子分野の研究開発に携わった後、浜町SCI調査部にて技術・計量分析を担当
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