日銀の政策修正と市場の3つのシナリオ

日銀は27-28日の金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロールの長期側の金利操作の運用を見直した。
(この記事は最近の浜町SCI 山田泰史のツイートを再編成・加筆したものです。)

従来、日銀は10年金利の上限を0.5%程度とし、それ以上の上昇は指値オペで抑え込んできた。
今回の変更は、プラスマイナス0.5%程度を維持するとしたものの、運用を柔軟化したもの。
1.0%までの上昇を想定するわけではないものの、念のために1.0%にキャップを設けたという。
1.0%未満でも上昇を抑えることはありうるし、1.0%を超えそうなら全力で抑え込むという意思なのだろう。

FRBでさえ近年の利上げは25 bpずつやっていることを考えれば、キャップとはいえ50 bp引き上げたのは思い切った変更と言えるのではないか。
こうした変更は国内投資家にどのような影響を及ぼすだろうか。

日銀の運用柔軟化の投資へのインプリケーション

仮に長期金利が1%に向けて上げていく場合、それでも目下のインフレには遠く及ばない。
また、期待インフレにも及ばない。
それでも利回り1%なら、もしかしたら長期国債を買おうという気持ちになるかもしれない。
(実際にはもう少し短い年限が美味しそうだ。)
あるいは外債を少し引き揚げるかもしれない。
日本のディスインフレ回帰を予想する投資家ならなおさらだ。
少し国内投資の景色が変わるかもしれない。

日本は長い間、短期間を除いて、実質金利がイールドカーブの大半で水面下に沈む《金融抑圧》の状況にある。
リスクフリー資産を保有すると実質価値を失う状況だ。
こうした状況では、例えば株式:債券=50:50のポートフォリオを組むことさえ勇気が必要だった。
債券のところで実質価値を失うためだ。

結果、やむなく債券でなく株式などリスク資産を増やすことになる。
これは金融緩和が意図する資産効果ルートの成果といえるのだろう。
お上には成果でも、投資家には抑圧である。
もしも、実質金利のマイナスが小さくなれば、そうした感覚はなくなり、さらに分散効果も復活する。
投資がもっと自由で戦略的に楽しめるようになるのではないか。

ただし、日銀に大きな金融政策正常化は望めない。
財政従属の状況は動かない。
やれるとすれば、10年ペッグを引き上げたことで、チャンスを見ながら、いくらかバランスシートの縮小にトライすることではないか。

外国人の日本国債売りに注意

もう1つ注視すべきは、再び外国人の日本国債売りが起こりうるという点だ。
長期金利に上限が設定されているということは、長期国債にフロアが設定されているということだが、まだフロアまで少しある。
そこで売りを仕掛けようという外国人がいるかもしれない。
日本の長期金利が上昇すべきものなら

  • 日銀が長期金利をペッグし続ける場合、円安
  • 日銀が長期金利のペッグを緩める場合、日本国債下落

という形で外国の投資家が利を得るかもしれない。
(もちろん、日本人も国債と円をショートすることで似たポジションになる。)

(次ページ:日米市場の3つのシナリオ)