【輪郭】ドル円と日経平均の底を根拠なく占う
以下は浜町SCI所属 山田による8月1-2日のツイートを再掲、一部加筆したものです。
8月1日 日銀政策決定会合翌日
(円高進行)
日銀が利上げして少し円高方向へ。
しかし、これは短期的に市場が調整したと考える。
日本の実質金利はいまだマイナス。
金融抑圧状態が続く。
円には引き続き売り圧力が加わっていると考えるべき。https://t.co/cnoL505AJi— 山田 泰史 (@Yash_Yamada) July 31, 2024
(長期的な円相場)
日銀は前の前の総裁あたりから、政治からMission Impossibleを与えられ、よく努力してきた。
それは植田体制も然り。
しかし、今回のように日銀が頑張れば頑張るほど、日銀にやれることは少なくなっていく。
財政を考えれば日本の利上げにはやはり厳しい限界がある。
市場はそれを知り尽くしている。
(財政再建は可能か)
何度も言うが、日銀はしょせん通過勘定。
問題の本質が政府の債務過多ならば、それを根本的に解決できるのは政府しかない。
しかし、政治が清廉でないから正しい政策を実行できなくなっている。
ちょろまかしの政治家が国民に財政再建を説得できるはずがない。
景気サイクルが進めば、税収増など吹っ飛ぶ。
財政再建は簡単でない。
政策は混迷を続けるだろう。
(短期・長期の円相場)
今何が起こっているか正しくとらえること。
循環的な変化と趨勢的な進展を見分けることが大切だ。
為替で言えば、円安圧力は短期で減少、長期で継続と見る。
(ただし、中長期ではドルもドル安へ。
つまり、円安ドル安を予想する。)
(大きな内外金利差と円安ストップの短期的不整合について)
日本の金融市場のトリレンマはどう均衡しうるのか。
シナリオ1:
循環的には短・中期的な均衡はありうる。
世界経済が鈍化し、諸外国がかなり大きな利下げをするケース。
ただし、これは景気循環のワンシーンと考えるべき。
シナリオ2:
別の可能性は、日本のディスインフレへの回帰。
ディスインフレと少々の利上げにより実質金利がプラスに戻れば、ホームカレンシーバイアスとあいまって円売り圧力は弱まるかもしれない。
これは、名目賃金や名目成長ではなく、ディスインフレにより実質値を高める方向性。
ある意味現実路線だが、みんなこれが嫌い。
低成長の中で持続可能な社会を作るべきとの意見はこれまでもあった。
しかし、受け入れられにくい。
まずガイジンがリフレ好きで、それがまだ世界標準とされている。
また、金融抑圧をせずに財政再建が可能か疑問がある。
今後も拡張的金融・財政政策が好まれる傾向が続くだろう。
もしもそうなら、円安ストップは循環的・一時的に終わりかねない。
8月2日 米市場の下落を受けて
やはり雰囲気・捉え方・ナラティブが変化しているよう。
下げなら慎重に買いたい。
でも早合点は禁物。
日本では2.x%の下落を「大きな」と形容する人が多いが、過去を知る人ならこんなの蚊に刺されたほどでもない。
本当の「大きな」下落はその倍ぐらいから。
まだまだ弱気相場を確信する必要はない。
とりあえず今日は(買いを)お休みしようかな。
仮に夏枯れで
オーバーシュートすれば買う程度の指値を置いて
深呼吸して
来週以降を考えよう
と思う。
(14:00頃)
日本株はオーバーシュートしなかった様子。
あと5%下げて弱気相場入り(2割のドローダウン)となる前後から買い始めようか。
(株安は追い風)
以前マーク・モビアス氏が自身を指して言った言葉:
私は、他人が悲鳴を上げている時にワクワクするタイプの投資家だ。
概して高名な投資家はそちら側にいて、愚かな投資家は悲鳴を上げる側にいる。
下げを悲しむなど理屈に合わない話。
特にNISAなど長期投資では、足元の株安を嘆く必要はない。
安くエントリーして、長く持ち、大きな実りを得る。
これが(投機ではなく)投資の現実的な姿。
もしも利上げで発射台(エントリー価格)が下がったなら日銀に感謝すべき。
金融・財政政策は足元の株価を持ち上げてしまう。
結果、将来の実りは小さくなる。
利上げで今回、発射台が少しだけ下がった。
(次の相場の底の感触)
もし仮にこれが本格的な弱気相場入りなら、底の予想(根拠なしの感触)は
日経平均17,000-29,000円。
円相場1ドル130円。(その後円安・ドル安基調へ)
デフレなら17,000円、スタグフレーションなら29,000円。
リーマン危機後の安値は7,162円、80円割れ。
それと比べれば天国の水準。
(円高はナチュラル・ヘッジでもある)
大きく下げるように見えるが、一部は円高による円の価値上昇で中和される。
160円から130円への円高は、円の価値がドルを単位で見て2割ほど上がることを意味する。
毎度のことだが、円高・株安は誇張されすぎている。
特に長く待てる人にとっては、傷はそんなに深くない。
(遠目で眺めるなら)
相場を長く見てきた人間からすれば
絶対水準として
17,000円は極端な株安ではない。
130円はむしろ円安。
(貨幣錯覚の怖さ)
極値でこの数字ならまったく問題ない。
(それが極値なら、定義からして中央回帰し、もう少しいい数字に戻るはずだから。)
むしろ怖いのは逆に振れた時。
ジンバブエ株市場はハイパーインフレ時、世界一上昇した市場だった。
山田 泰史
横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部化学科卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。
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