【書評】紙の約束 マネー、債務、新世界秩序
エコノミスト誌でエディターを務めるフィリップ・コガン氏がレバレッジを高め続ける世界経済を綴る。
「紙の約束」とは(不換)紙幣であり、国債である。
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借金漬けとなった世界が、いかにしてこうなったかを詳説している。 米国もまたその筆頭格だ。 |
債務危機の長期的な影響は何か。
コガン氏によれば
・インフレ
・不況
・デフォルト
だという。
コガン氏はこの3つを「聖ならざる三位一体」と表現している。
3つが同時に起こりうるという不吉な暗示であろう。
米国も日本もそれぞれの事情からすぐさまデフォルトするなどということは考えにくい。
とすれば、
インフレ+不況=スタグフレーション
がありうるシナリオということだろうか。
この本では米国の金融緩和QEについても触れられている。
原著が2011年の出版であり、QE2が終わったタイミングだった。
コガン氏はQEについて「おそらく効果がないのだろう」と切って捨てる。
QEは時間稼ぎには使えるものの、終了時の反動も同じだけあるからだ。
興味深いのは、そこで2011年のビル・グロス氏(PIMCOの共同CEOで債券王と呼ばれる)の失敗が言及されているところ。
QE2終了でグロス氏は債券が売られると予想したが、逆だった。
QE終了によって景気が後退するとの市場の見方が原因だった。
こういう記憶は大切だ。
早ければ来月にもQE縮小が始まると予想されている。
冒険投資家ジム・ロジャーズは、QE縮小は経済悪化で逆回転すると予想している。
紙の約束は容易には減っていかないようだ。