【書評】日本銀行
金融政策のフロンティア: 国際的潮流と非伝統的政策の著者、元日本銀行金融研究所所長、翁邦雄 京都大学教授による日銀の解説。
前著が金融政策ごとに詳説された構成だったのに対し、本著は各国中央銀行ごとの物語をつむぐ形で書かれており、読みやすい。
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圧巻なのは1998年のポール・クルーグマンによる提言:
についての背景説明と解釈だろう。 |
著者は、このような政策が需要の先食いに過ぎないのではないかとの疑問を呈している。
その先に必要なのは、支出したくなるようなモノ、サービス、投資機会なのではないかとの主張だ。
本書では最終章で異次元緩和の出口戦略について語られる。
量的緩和の出口では、巨額の社会的コストが発生すると指摘する。
その上で4つの選択肢が挙がる:
- インフレとともに起こる金利上昇を甘受する: ありそうにないとする。
これを選べば、巨額の金利を金融機関に支払い続けることになり、政府は厳しい批判にさらされる。 - 日銀の財政悪化を政府が保証する: 黒田総裁が否定している。
- Financial Repression: 預金準備率を大幅に引き上げて日銀当座預金の金利をゼロにして、実質的な課税を行う。
- クルーグマンの提言を実行: インフレを制御できなくなる可能性が高い。
なんとも通好みの主張ではないか。
なお、本書では
マネタリーベースがインフレないしインフレ期待に機械的に直接影響を与えるトランスミッション・メカニズムは、ほとんど存在しない。
という端的かつ明瞭な事実が述べられている。