【書評】デフレーション “日本の慢性病”の全貌を解明する

吉川洋 東京大学大学院教授によるリーダブルな経済書。
日本を苦しめ続けるデフレの原因を解き明かす。

【送料無料】デフレーション [ 吉川洋 ]

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価格:1,890円(税込、送料込)

重く深い経済現象を論じていながら、楽しめる経済書だ。

第1章・第2章はデフレ論争や過去20年の経済の回顧。
ノスタルジーさえ感じるほど、楽しく読めてしまう。
それを終えると、物価と貨幣数量説についての論考に進む。
堅い論証が為される割に、とても読みやすい。

吉川教授はデフレの原因は
 デフレ自体でも
 マネー・サプライの不足でも
 人口減少でも
ないと論破する。

 
それでは、本当の原因は何か。
吉川氏は、日本企業が
 コスト削減のための「プロセス・イノベーション」に注力するだけで
 新しいモノやサービスを生み出す「プロダクト・イノベーション」を怠ったため
と指摘する。
コスト削減からはたいした有効需要は生み出せない。

読み終えて、筆者は少々暗い思いになった。
果たして、日本はデフレから抜け出せるのだろうか。
現代において、日本がプロダクト・イノベーションを引き起こせた例はどれだけあろう。
厳しく見れば、日本は欧米を真似て、いいものを安く作ることで生きてきた国である。
思いつくままに言えば、かつてのウォークマン、最近のジャパニメーションか。
言うまでもなく、今の日本を救うには力不足だろう。