【書評】日本株式市場のリスクプレミアムと資本コスト
みずほ年金研究所の菅原周一氏によるアカデミックな本。
骨の折れるテーマだが、投資理論をかじったことのある人なら誰しも気になるテーマだ。
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株式投資のリターンはどう評価すべきだろうか。 もちろん、最終的には絶対リターン(どれだけ上がったか)で評価すべきだ。 とは言え、どんな投資対象にも上げ下げがある以上、いつも上げることを求めるのには無理がある。 また、市場全体が急伸する中では、投資価値が小幅でも上がればいいというものでもなかろう。 多くの人が採用しているのがCAPM理論だ。 |
株式市場のリスクプレミアムについて、本書は精緻に議論をしている。
論点は網羅されており、クォンツ分析を手がけたい人には必読の書だと言える。
とは言え、普通の人にとっては読みにくい学術書である。
普通の人にとって、何がテイク・アウトたりえるのか。
本書は日本の株式リスク・プレミアムの実測値を掲載している。
長期国債のインカム・リターン比で:
1952-1960年: 27.01%
1961-1970年: 3.41%
1971-1980年: 8.48%
1981-1990年: 9.28%
1991-2000年: -3.78%
2001-2012年: -1.54%
とされている。
こんなデータが投資家にとっては面白い問題提起なのではないか。
次の10年の投資について、私たちはどのようなリスク・プレミアムを使えばよいのか。
ビジネス・スクールでは、なるべく長い期間の実測値を用いるべきと教える。
しかし、上の数字の並びを見る限り、それは適当ではないように思われる。
失われた20年の間、日本のリスク・プレミアムはマイナスだった。
だから、国債を買うのが正しい選択であったのだ。
今、多くの人は日本株のリスク・プレミアムがプラスに転じると感じているだろう。
つまり、投資のホライズンによって、使うべきリスク・プレミアムは変わる。
そもそも、私たちは確固たる投資のホライズンを自認できているだろうか。
そんな反省を促すテーマの本だ。