レイ・ダリオのビデオに意図はあるか?
先日、Bridgewater AssociatesのRay Dalio氏による経済教育のビデオを紹介した。
ダリオ氏といえば、ジョージ・ソロスを超えた男として有名だ。
「30分で判る 経済の仕組み」と題された30分のビデオは20日にYouTubeにアップロードされた。
ちなみに、英語版・ロシア語版は昨年2013年9月にアップロードされている。
また、中国語版が今月21日にアップロードされている。
ビデオは、この経済の仕組みを知っていたから「世界金融危機を予知して避けることができました」と始まる。
景気変動を
1) 生産力の成長
2) 債務の短期的な周期
3) 債務の長期的な周期
に分類し、債務の縮小局面(大恐慌・リーマン危機)において流動性の罠が発生すると説く。
そこからの脱出策には
人・ビジネス・政府が支出を縮小(緊縮)
債務の不履行・再編
富裕層からそれ以外への富の再分配
量的緩和
の4つ、予防策には
所得より速く債務を増えさせない
生産性より速く所得を増えさせない
生産性向上の努力を惜しまない
の3つがあるという。
独特の表現とは思うが、分かりやすく説得力のあるビデオに仕上がっている。
問題は、この日本語版の投入に何か意図があったのかということ。
英語版は昨年9月にアップロードされ、12月にFRBが量的緩和の縮小をアナウンスした。
民間セクターでデレバレッジが進んだ今、債務の縮小局面とは量的緩和の縮小とかなり重なる事象だ。
日銀の黒田総裁は28日の挨拶で
経済全体の安定は、物価や実体経済の安定化だけではもたらされず、金融の安定化も重要である
と語った。
これは、金融市場に対して超低金利がいつまでも続くとは限らないとの警告とも受け取れる。
また、岩田副総裁は26日の講演で
目標を上回るインフレにもデフレにもしない仕組み
に言及した。
これは、2%を超えるインフレには緩和の縮小もありうると解される。
異次元緩和の巻き戻しはそう遠い話ではないかもしれない。
ダリオ氏はそれを見込んでこのタイミングで吹き替え版を投入したのか。
ヘッジ・ファンドの仕掛けを恐れるのは杞憂だろうか。