【書評】榊原英資の成熟戦略

ミスター円こと榊原英資 青山学院大学教授による著書。
メッセージは単純明快だ。

無駄な成長の努力を繰り返すより、ありのままの成熟した自分を受け入れることです。
・・・
「邪魔な規制をやめれば日本の経済は再び成長を始める」というのは、幻想にすぎません。

自民・民主双方が進めた規制緩和や、アベノミクス第3の矢である成長戦略にダメ出しをしているのである。
確かに日本人はこうしたテーマについてステレオタイプな見方に支配されてしまっているかもしれない。
規制が存在する中で高度成長を遂げた日本が、今度は規制撤廃によって成長を得るという話。
日本が幸福な社会になるためには何が何でも成長が必要という話。
その成長の分野は輸出だろうという信仰。
これらは自明の命題のように語られることがあるが、決して自明ではない。

榊原教授は、規制撤廃で成長路線に戻れるとする論を一蹴している。
その延長線上にあるのは、規制は維持すべきという信念。
さらに、それを管理・運営する優秀な官僚機構を温存すべきと議論は続く。

何事も中身しだいというに尽きる。
規制には緩和すべきものとそうでないものがあろう。
官僚にも待遇に見合う能力を備え実績を挙げている人と、そうでない人がいるはずだ。
一般論だけで白黒はっきり分かれるものではない。