【書評】日本経済「最後の選択」

伊藤隆敏コロンビア大学教授が今年1月に上梓した日本財政についての経済書。
執筆されたのは、昨年10月末の日銀追加緩和と11月の消費増税延期の直後だ。

正統派の財政シミュレーション

日本財政への危機感がにじむ内容になっている。
とは言え、IMF、大蔵省、経済財政諮問会議などで公職に就かれていた先生だけに語り口はあくまで慎重だ。
いたずらに危機をあおったりしない。
何かの転換点を読み取りたい者からすれば、そこが少々まだるっこしい。

伊藤教授は、日本財政についていくつかのパラメーター:

  • 成長率
  • 利払いの国債への再投資率
  • 消費税率
  • インフレ度合い

を設け、シミュレーションを行っている。

消費税率は少なくとも15%まで引き上げなくては、2020年代半ばに財政危機が起きるケースが多いことがわかった。
消費税率を20%まで引き上げれば、ほとんどのケースで維持可能、となることがわかった。

政策決定者の意思が結論を変える

世の中の報道と比べても、たいへん常識的な結果といえまいか。
消費税率というパラメーターはしょせんは国民の意思で決まる。
ならば、安心してもいいのだろうか。

伊藤教授がこの本を執筆中に消費増税の延期があった。
伊藤教授は、延期なかりせばの道筋を「あと5年間、この国道をひた走れば目的地に着く」と書いている。
延期された道筋を「国道を降りて、抜け道を通って・・・高速道路に乗って、目的地まで飛ばす」と喩えている。
こうした政策決定者の意思が、財政再建の実現性を大きく変化させる。

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