ピーター・シフ:異次元緩和が日本の共産化を招く
Euro Pacific CapitalのPeter Schiff氏がTownHall.comで日本について語っている。
量的緩和政策を共産化と捉えたユニークな論文だ。
心配の発端
シフ氏は、量的緩和がもたらしうる社会の変化に焦点を当てている。
はるかに長期に及ぶ金融刺激策にも関わらず、日本経済は奮わず、断続的に不景気にもてあそばれるままだ。
この失敗にも関わらず、安倍首相は黒田総裁とともに最近、従来の賭けを2倍に引き上げた。
日本の刺激策は現在、米国ではまだ見られない不吉な次元に及んでいる。
特に、日銀は巨額の上場株の購入を行おうとしている。
ここまでは悪くない。
こうしたステレオタイプな解説は、外国人による日本株購入を刺激してくれるかもしれない。
量的緩和がもたらす共産化
ところが、次の文によって、シフ氏の真の意図が明らかになる。
まだ懐疑的な人たちも、この巨大な金融政策実験のもたらす結果を日本が教えてくれていることに目を向けるべきだ:
債務、不況、産業の国有化。
そう、シフ氏が語りたいのは、日本社会の共産主義化なのである。
笑うべきだろう。
しかし、笑えないところもなくはない。
例えば不動産市場。
J-REITの相場は、だいぶ以前から実質的に日銀が支える状況に陥った。
異次元緩和が成功を収めても、日銀が積み上げてしまった資産を売却していくには相当な時間がかかるだろう。
政府による企業統治
いやいや、シフ氏が言いたいのは、そういうことではない。
シフ氏は、日銀がETFでなく現物株を大量に買い入れようとしていると言う。
そうした買い入れは、日本の大企業に対して意味のある議決権を政府にもたらす。
Bloombergが紹介したあるエコノミストの発言によれば、安倍政権は議決権によって日本企業に政府の優先課題である賃上げ・企業支出拡大を迫るはずという。
この政府による「ミクロ」刺激策は、国債買入れの「マクロ」政策より有効だろうと言う。
ここまで来ると、やや噴飯ものか。
それを知ってか、シフ氏は慎重に引用の形をとっている。
実は、シフ氏の重点は経済政策としての有効性にあるのではない。
この人は証券会社社長であるとともに、社会活動家なのだ。
米経済の危機に備えて、ドルを売り、金・外貨・外国資産を買っておきましょうという社会活動をしているのだ。
シフ氏の本質を知るには、氏の父のことを語らざるを得ない。
(次ページ: 歴史に残る社会運動家だった父アーウィン)