【書評】 世界を震撼させる中国経済の真実

10月に出版された榊原英資 青山学院大学教授による中国事情の解説。
中国側の見方も説明し、親中的と言えるかもしれない。

どっちよりという話は別として、筆者も、中国を殊更に敵視する風潮はバランスを欠いていると感じる。
本書でも触れられている中国中心で設立されたAIIBが一例だ。
本コラムでも、日本を含む西側諸国の専横さを指摘してきた。
中国は力をつけ、そうした専横を自ら為そうとしている。
他人を非難する前に、自分たちのやり方も反省しなければいけない。
そうすれば、相手方のやり口への理解がもっと深まるはずだ。
実際、IMFはついに人民元をSDRに採用すると決めたところだ。

さて、そうしたバランス感覚の話はさておき、ミスター円からはなんと言っても通貨の話を聞いておくべきだ。
榊原教授は、中国が人民元を「アジア通貨化」しようと考えていると読む。
なるほど、現状アジアで(デファクトでもいいから)共通通貨が生まれるとすれば日本円か人民元だ。
そして、経済規模で言えば、中国は世界2位から1位を伺い、日本は3位である。

中国が為替規制を撤廃して人民元を自由化すれば、人口や経済規模からしても、元は円よりも多く取引される通貨になっていきます。

ここからが興味深い。
相対的に日本円の役割が低下すれば、何が起こるだろう。

円は、共通通貨ユーロがメインになったヨーロッパにおける、イギリスポンドのような存在になってしまうかもしれません。

榊原教授は、円の「ポンド化」を懸念しているのだ。
そうなる前に、日本は「アジア版ユーロ」の導入を目指すべきであり、そのためには中国との協力作業が必須だと主張されている。

榊原教授は2050年頃の話として、

国際金融・通貨体制は、どの経済大国も突出して強いリーダーシップを握ることができず、「無極化」ともいうべき状態にあるだろう

と書いている。