バーナンキ:中長期金利ターゲティングは抜いてはいけない宝刀

ベン・バーナンキ前FRB議長が自身のブログ 1) でマイナス金利以外の政策手段、中長期金利目標について考察した。
期待に働きかけるのに有効な手段としながら、実際に実施すべきものではないと語った。

すでに超低金利にある中、金融政策にさらなる緩和余地が少ないことが不安を掻き立てている。
仮に不況色が鮮明になった場合、中央銀行はどういう政策手段を用いうるのか。
バーナンキ氏は先日、マイナス金利政策について検討を行い、米国での採用の可能性は高くないと論じた。

中長期金利ターゲティングとは

では、他に何がありうるのか。
そこで、中長期金利目標の話になる。
バーナンキ氏は、マイナス金利や中長期金利目標のような特殊な手法が米国で採用されるとは思わないと前置きした上で、劇薬は用いなくても、公衆や市場に対して教育する価値があるのだという。
劇薬があることで、市場の長期インフレ期待を醸成しやすくなるのだ。
「パラドクスのような話だが、公衆・市場参加者に過激な金融政策の選択肢を教育することで、そうした選択肢が用いられないことを担保できる」のだという。

バーナンキ氏が今回俎上に載せたのは、中長期金利に目標を設定する金融政策だ。
今はインフレ目標だが、同様に中長期金利にも目標を設定しようというのだ。
バーナンキ氏は、第二次大戦中の1942年、米国が戦費の調達コストを低減するために中長期金利にシーリングを設定した例を紹介している。
この時は政府財政を賄うための金融抑圧だったが、今回はマクロ経済の刺激策としての活用の是非が問われている。

どう働くのか

バーナンキ氏の考える手法はこんな感じだ。
スタート時点で政策の期間を定め、その期間を残存期間に持つ国債銘柄を指定する。
その国債の銘柄の利回りをオペでコントロールする。
時間経過とともに、残存期間も減り、当該銘柄の償還とともに政策が終了する。
他の非伝統的金融政策の持つ《出口が至難》という欠点に配慮した形だ。

その金融政策が信認を得ていれば、たいした量の買い入れを行わなくても、目標の金利は達成される。
信認を得ていなければ、大量の国債を買い入れなければいけない。
バランスシートの膨張を最小限にするため、バーナンキ氏は、フォワード・ガイダンスの重要性を強調する。
目標期間が長くなればなるほど、金利ペッグが難しくなるため、仮にFRBが中長期金利目標を検討するにしても、2-3年の期間に留まるだろうという。

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