【解説】「最後のひと上げ」予想

まだ材料が足りない

市場参加者が心配を募らせているのにどうして「市場は心配の壁を登る」のか。
この理解には、バブルの権威ロバート・シラー教授の洞察が役に立つ。

「私たちは(たくさんのデータから)、価格急騰が不合理な熱狂を反映するものと考えている。
そして、その熱狂がフィッシングによって助長されるのである。」

「最後のひと上げ」とその直前、不心得者が素人投資家をリスク資産市場に誘い込む事例が見られるのである。
そして、その素人たちが素人であるがゆえにバブルを大きく膨らませていく。
少なくとも米国株市場について言う限り、市場は長らく心配の壁を登り続けている。
これはフィッシングや根拠なき熱狂とは異なる風景だ。

株、そしてコモディティ

「最後のひと上げ」予想を信じるとすれば、どういう投資行動を取るべきだろう。
単純だ。
まだ、ひと上げが来ていないのだから、それを待てばいい。
あまり欲をかかず「頭としっぽはくれてやる」ぐらいで手じまえばいい。
あるいは、最後まで手じまわずリスク・パリティ戦略的な運用を行えばいい。

その次の主役はコモディティだろう。
コモディティの上下は株式の上下より遅いタイミングで起こる傾向がある。
だから、景気後退入りのタイミングでもコモディティ投資が有効となりうる可能性がある。
コモディティは、新債券王ジェフリー・ガンドラック氏が最近さかんに推奨していることで有名だ。

景気後退入りはいつか

では、景気後退はいつ始まるのか。
あと半年は大丈夫とか、徐々に近づいているといった見方が増えつつある。
さらに、ケネス・ロゴフ教授のように、大統領選の要因を重視する人も多い。
2020年11月の大統領選まで景気・市場を持たせるために、トランプ大統領があらゆる手段を講じるだろうとの考えだ。
実際に景気・市場がもつかどうかはわからないが、むちゃな政策まで投下されるとの予想にも説得力がある。

景気に先行する株式市場はどう振舞うだろう。
浜町SCI調べでは、過去4回の景気後退期、株式市場は平均8.5か月ほど先行していた。
だとすれば、仮に景気後退入りが2020年末だとしても、2020年初めには赤信号になる。
トランポノミクスの化けの皮が剥がれるのが早くなるほど、この時期は前倒しになる。

(次ページ: リスク・シナリオと日本株)

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