【書評】マンガーの投資術
ウォーレン・バフェットの盟友、チャーリー・マンガー氏の金言集。
タイトル、マンガーの言葉、解説という構成で138の金言が収録されており、とても読みやすい。
ここでは「No.7 グレアムの間違い」と題された金言を紹介しよう。
ベンジャミン・グレアムは投資家として多くを学んだ。
彼が会社を評価する手法はすべて、大暴落と大恐慌に打ちのめされた経験によって形作られた。
そこには恐怖というトラウマが色濃く反映されており、すべてはそれを寄せつけないように設計されている。
タイトルから明らかなとおり、バリュー投資の父グレアムの手法に異を唱えたくだりだ。
グレアムの手法は「セーフティ・マージン」という言葉に代表される。
ある銘柄の本源的価値を評価し、市場価格がそれより十分なセーフティ・マージン分だけ低い場合に投資を実行するというやり方だ。
「Buy low, sell high.」どおりのやり方なのだが、このやり方はバフェットやマンガーのバリュー投資とは必ずしも同じではない。
マンガーがグレアムに異を唱えたのは《Sell high》を行うか否かの部分だ。
グレアムの考えでは、市場価格が本源的価値に達すれば売却することになる。
一方、バフェットやマンガーは、コカ・コーラ投資に見られるように、優れた企業の株式に投資し、時として売ることを想定せず、長く長くキャリーを享受する。
一たびそうした銘柄を発見し投資できれば、人生を通してリターンを獲得し続けることができるのである。
「No.12 分散投資」では、バフェットと同じ意見をより辛辣に語っている。
分散投資をありがたがるとは、気が違っているとしか思えない。
分散投資は俗に《敗者の投資法》と呼ばれる。
投資家が勝ち組の銘柄を選び出すことができるなら、その銘柄に集中投資すればいい。
分散投資のために勝ち組でない銘柄にまで投資するのは、単にリターンを低下させるだけの愚行だ。
それでも分散投資を行うのは、投資家が勝ち組銘柄を選ぶ能力を有していないからだろう。
ただし、よく管理され、資産クラスをまたがる分散投資にはもう一つの効用がある。
それは、リスク・パリティ戦略への応用が可能であることだ。
この戦略では市場の上昇だけでなくボラティリティをも収益機会にすることができる。