試されるイールド・カーブ・コントロール

31日までの日銀金融政策決定会合は、初めてイールド・カーブ・コントロール(YCC)が試されるステージになるかもしれない。
YCCを突き崩すとすれば、それは日銀自身が捨て去った純粋期待仮説である。

先週初め、日本の長期金利が上昇して市場を驚かせたことがあった。
今でも長期金利は日銀が許容する上限近くにとどまっている。
日本では騒ぎすぎとの論調が大勢を占めている。
それはある意味正しいが、ある意味正しくない。
正しいという意味は、日銀が大きな政策変更をしないであろうということだ。
しかし、だからといって長期金利が動かないというわけではない。

金利差と為替の誤解」では、長期金利上昇がどの期間での上昇を想定しているのかを計算した。
円のインプライド・フォワード金利の上昇幅は4年後以降のところで大きかった。
つまり、市場は主に4年先以降の金利上昇を予想し、長期金利を上昇させたわけだ。
今日、明日の短期金利上昇を織り込んだわけではない。
そう理解すると、海外勢は騒ぎすぎとの論調はピントがずれているかもしれない。

国債買入れ増額のリスク

この現象が示唆することは何か。
日銀は市場に金利上昇を予想させてはいけないということだ。
仮に長期金利ターゲットを(ある程度の幅を持たせるにせよ)ゼロに置いた現状で考えよう。
たとえ9年後であっても短期金利上昇を市場に予想させてしまうと、その期待を長期金利は1年分織り込み、長期金利を上昇させる。
これは、純粋期待仮説が教えるとおりの現象だ。
市場は長期金利を押し上げようとし、日銀は指値オペで応戦しようとする。

ここで大きな問題となるのは、他に金利低下要因が発生しない場合だ。
市場が金利上昇期待を維持するかぎり、アービトラージャーは長期国債を売り続けるだろう。
金利上昇期待が日銀の許容する幅以上の長期金利上昇をもたらす場合、日銀は指値オペで応戦する。
(理論的には)このアービトラージは閉じることがなく、際限なく売買が続く。
結果、これまでせっかくうまくやってきたステルス・テーパリングは逆行を迫られ、日銀は国債買入れをスピードアップして、自ら財務リスクを高めることになる。

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