ガンドラック:前回はプラザ合意だった
新債券王ことDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏の不吉な予言が止まらない。
今度はプラザ合意の再来を匂わせるツイートをしている。
2018年第3四半期GDP速報値は貿易赤字によって1.8%押し下げられた。
過去33年で最高だ。
前回は対応策として人為的に米ドル安が進められ、ドル指数は2年間で50%も下げた。
ガンドラック氏が27日ツイートした。
米商務省が26日発表した7-9月期GDP速報値は前期比年率3.5%増だった。
市場予想はBloomberg・Reutersのいずれの調査でも3.3%増だったから、市場予想をわずかに上回ったことになる。
全体の数字こそ好調に見えるものの、個人消費、政府支出、在庫投資の伸びが牽引したところに不安材料も見える。
設備投資は0.8%増にとどまり、供給制約の解消を感じさせないのだ。
トランプ政権は大規模財政刺激策を打ち、輸入関税を導入した。
財政刺激策を打ったのだから、政府支出が拡大するのは当然だ。
供給制約がある中で国内需要が増え、輸入関税前の駆け込み輸入もあったのだから、貿易収支は悪化する。
それが、GDP寄与度1.8%の貿易赤字につながったのだ。
問題はそこから。
33年前と言えば1985年、プラザ合意の年だ。
1970年代からインフレに悩まされた米国は、ボルカー・ショックに象徴される金融引き締めでインフレ退治を行った。
2桁までいったFF金利が引き下げに転じたのは1984年夏だ。
この高金利時代、米国は貿易赤字を続けていたが、ドル安とはならなかった。
逆に高金利を求める資本流入によりドル高が進んだのだ。
これがプラザ合意を生み出す素地を作った。
プラザ合意がその後の経済に与えた影響は絶大で、例えば直後のバブルもまたここから誘引されたものと言われている。
実際、現在と1980年代の類似点を指摘する声は少なくない。
JP Morganの佐々木融氏は米金融引き締め、日本の金融緩和・財政悪化・対外証券投資を挙げている。
大正大学 小峰隆夫教授は貿易摩擦、円高対応のための金融緩和を挙げている。
現在と厳密に一致するわけではないが、日米ともにたいして変わらない経済運営を続けているから、似た構図が存在しても驚くことではない。
そこに日米TAGでの為替条項への懸念が出てくれば、日本人がプラザ合意やクリントン政権時代の通商摩擦を思い出すのは自然なことだ。
不気味なのは、確度の高い予想を続けるガンドラック氏がプラザ合意との類似を匂わす点だろう。
同氏は5月、ドル指数が95-98でピークを打つと予想しており、同指数はそのレンジでもみ合っている。
今回のプラザ合意との類推もそのシナリオと擦り合ったものとなっている。
もっとも、最近のガンドラック氏は不吉なツイートをするのが日課となっているようなところもある。
すべてを真に受けるべきでもないかもしれない。
25日にはこんなツイートもしている。
ドイツ銀行の株価は最近安定的に10ドルを割り込んでおり、数十年での安値圏だ。
過去5年大きく下げた。
金融メディアからは十分な注目を浴びていない。