【書評】お金の流れで読む日本と世界の未来

ジム・ロジャーズ氏への長いインタビューを編集・翻訳した本。
「世界的投資家は予見する」との副題がついている。

(アマゾン)『お金の流れで読む 日本と世界の未来』

本書の特徴を言うなら、ロジャーズ氏が語ったにしてはやや違和感のある文脈・文体、膨らみすぎた展開が見られること。
また、この本の内容から「お金の流れ」を感じることはない。
「日本と世界の未来」と言うほどには系統だって未来が予想されているわけでもない。
要は、本書はマーケティングの産物ということだろう。

逆に言えば、読者に受け入れられやすい本であることも意味しているのかもしれない。
日本人にとって読みやすく書かれており、読みやすい量にまとまっている。
文脈としてではなく個々のポイントを拾い読むなら、ロジャーズ氏の日ごろの主張どおりのことが書かれている。

内容については、フィナンシャル・ポインター記事でロジャーズ氏をフォローしている読者ならお馴染みのものが大半だ。
しかし、それでも発見とは常にあるものだ。
ここでは2点、短く紹介しよう。
1つ目はETFについてだ。

運用資産の多くがETFに集中しすぎている現状は問題だ。
・・・賢い投資家はいま、ETFに入っていない企業を探している。

ETFが市場のリスクを高めかねないとは、ジャック・ボーグルをはじめ多くの市場関係者が指摘してきたところだ。
しかし、今回のロジャーズ氏の批判はやや浅いレベルからの問題視だ。
株式市場が今後下落するという前提のもとに、ETFに入っていない方が有利と判断している。
これは、株が上がる局面では逆に振れるから、諸刃の剣と言わざるを得ない。

日本人は、この推奨をもう少し前向きに聞けるかもしれない。
日銀がETFを大量に買っているからだ。
もちろん、日銀がETFを買い続ける間は、対象インデックスに組み入れられた銘柄が有利になるし、逆も真なりだ。
しかし、投資家にはもう1つ、日本株に背を向けるという選択肢もあるのだ。

2つ目は、もっと一般的な投資の教えだ。
これは解説不要だろう。

実は「待てる」ことも、投資家に必要な資質の一つである。
投資家に必要なのは、ほとんどの場合「何もしない」ことなのだ。
・・・
確実に商機が見出せるまでは、何もしてはいけない。