【書評】まぐれ(ナシーム・ニコラス・タレブ著)
『ブラック・スワン』の著書で有名なナシーム・ニコラス・タレブ氏が2001年に上梓したエッセイ(?)。
副題「投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」が、本書のテーマであろうか。
いや、もう少し踏み込んで、金融プロフェッショナルらをディスるような内容になっている。
多少理解するのに素養が必要なのだろうが、とても知的で楽しい読み物だ。
そして、不思議なことに読了した後にあまり印象が残らない。
様々なエピソードが次々と語られ、読者はしばし考えた後、忘れていくのではないか。
結局のところ、主たるポイントは、プロローグに掲げられた「表P.1」に集約されている。
この表が、様々な分野での勘違いのパターンを示している。
投資活動の中で自身の勘違いを防ぎたいと願うなら、チェックリストとして使えるかもしれない。
実際、第5章では、ビギナーズ・ラックで勘違いし奢り高ぶって失敗に至る市場関係者の類型がいくつか列挙されている。
いずれも、個人投資家にも耳の痛い指摘だろう。
もっとも、表P.1にしても第5章にしても、人間の心理に目指した指摘になっている。
それを教訓として勘違いを回避するには、相当な精神力が必要とされるのかもしれない。