【書評】危機の時代 by ジム・ロジャーズ
半年ほど前の本だが、ジム・ロジャーズ氏の日本での著書『危機の時代 伝説の投資家が語る経済とマネーの未来』を手短に紹介しよう。
もう十年近くロジャーズ氏を紹介し続けている弊ブログ(FPを含む)がこんなことを書くのも妙だが、近年ロジャーズ氏が日本で人気らしい。
同氏を《世界の3大投資家》などと祀り上げ、誇大広告し、飯のタネにしようとでもいうのだろうか。
入れ替わり立ち代わり似たようなペーパーバックが出版されている。
その点、本書はまともな良書だ。
タイトルは別として、中身は歪なクローズアップなどをせず、淡々とロジャーズ氏の考えを書いている。
同氏が言わないような説明的な部分もあるが、それは専門的な部分をかみ砕いたものであり、投資・経済の初心者にとって適切な加筆といえるだろう。
ロジャーズ氏は学生時代歴史を学んでいた時期がある。
だから、歴史の専門家だといえるだろうが、それでも《伝説の歴史家》ではない。
《伝説の投資家》だ。
同氏に世界最高水準の英知を求めるなら、その対象は歴史や外交ではなく投資であろう。
とはいえ、行動ファイナンスの隆盛からも明らかなように、投資にとって歴史は極めて重要だ。
ロジャーズ氏の歴史観を紹介しつつ、かつ、個別の議論に踏み込みすぎないところが本書の手柄だろう。
突き詰めれば、ロジャーズ氏は決して高度テクニックの人ではない。
真面目で地道・勤勉で常識的であるのが尊敬を集める理由だろう。
本書にはそのエッセンスがバランスよく紹介されている。
ロジャーズ氏をこれからキャッチ・アップしようとする人には格好の本になっている。
(ただし、同氏の様々な予想を鵜呑みにして信じ込んではいけない。
予想とはあくまで予想にすぎない。)
一方、長年弊ブログやFPで同氏の記事を読んでいる人からすると、大半は既出の内容だ。
そういう人には必要のない本かもしれない。