「資金逃避と通貨防衛」
まだ、日本について悲観的になりすぎるべき時ではないのだろう。
世の中には、若干の恐怖感を感じつつも、逃げ出す術を知らない《沈黙の羊》が依然として大勢いるからだ。
弊社著『超長期サイクルが終わる時 – フィナンシャルポインター流 投資家研究』
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「第4章 債務サイクルの終わりに起こること」より引用:
資金逃避と通貨防衛
ある通貨が下落を始めた場合、その下落分を金利差で補う(相対的に高い金利を付す)ことができないと、国債と通貨の魅力がなくなってしまう。
長期債務サイクルが終期を迎えると、定義からして莫大な債務を抱えているため、金利は引き上げられない。
それで国債と通貨が売られてしまう。
結果、低金利を望みながらも、金利は上昇し、通貨は下落し、インフレ的不況を引き起こす。
円が信認を失ったかといえば、まだそうではないだろう。
通貨危機とはもっと劇的なものだ。
しかし、いつまでも強がりばかり言える状況でもない。
日本の金融・財政当局もついにリフレを成し遂げた。
皮肉にもロシアの援護付きになったにせよ、不可能と思われていた2%物価目標を実現したことを成果と言わないわけにはいかない。
ただし、日本の場合、この成果にはそれを台無しにして余りあるマイナス面がある。
強烈なリフレ政策下で続いてきた賃金の上げ渋り、実質賃金の低下だ。
これを解決できなければ、リフレ政策は《国民を貧しくする政策》とされてしまう。
「インフレ的不況」とはスタグフレーション。
インフレに所得が追い付かず、需要を押し下げるなどが典型だ。
そこに来て、頑なな金融緩和継続は、通貨安による交易条件の悪化による供給面での悪影響をもたらしている。
《金融政策は需要面の政策だから日銀は金融政策を変えるべきでない》といった主張は、実に表面的なものであろう。
誤解のないよう言い添えるが、日銀の現在を責めているわけではない。
今の日銀にやれることは極めて少ないし、やっても実質的な効果は小さかろう。
誰か他の当事者が(為替介入などという弥縫策でない)可能性を示し、市場に足元を見られないようにすべきなのではないか。