日銀の政策修正と市場の3つのシナリオ

日米市場の3つのシナリオ

以前5月と7月に日米市場について3つのシナリオを挙げたことがある。

  1. メインシナリオ: 米利上げの終了
    能天気な米市場は通常ここから最後のひと上げを演じる。
    利下げもあるかもしれない。
    しかし、その後、利上げが足りないことが判明し、利上げに逆戻り。
    米経済・米市場は縮小へ。
    日本企業の利益は急減・消滅しがち。
  2. リスクシナリオ; 米経済の予想外の強さ
    コロナでの財政政策の効果が持続。
    大統領サイクルが寄与するほか、予想外の大幅な利上げがマージンになる。
    米財政再建は不可避だが先送りされ、大きな利下げ余地によりハードランディングが回避される。
    この幸福なシナリオでもドル相場には要注意。
  3. 7月追加のシナリオ: 戦争が停止(・終結)
    リスク資産市場は好感するだろう。
    内容によってはディスインフレ圧力となり、世界の金融政策の景色が変わりうる。
    為替は、金利差の円高なのか、リスクオンの円安なのか?

米経済・市場がソフトランディングした場合

これら3つのシナリオのうち、最近はリスクシナリオ(2番手)の可能性が高まったと言われる。
いわゆるソフトランディングのシナリオだ。
でも、これをメインシナリオにするのはいかがなものか。

シナリオの立て方として《今回は違う》をメインに据えるのは気が引ける。
もう1つが米実質金利だ。

米物価連動国債利回り(青:10年、赤:5年)
米物価連動国債利回り(青:10年、赤:5年)

急激な利上げで、米実質金利はプラス圏に浮上している。
これがインフレや景気を抑え込もうとしているが、一方で過去の財政政策の余波などが抵抗しているところだ。
きれいにインフレだけが剥落し、景気は生き残るという話は眉に唾して拝聴したい。

だから、2のソフトランディング・シナリオはリスクシナリオのままとしている。
むしろ気になるのは3のシナリオだ。
こちらはかなりの急なサプライズとなるだろう。
2のシナリオも同時に実現するかもしれない。

仮に米経済が景気後退入りしない場合、日本経済も沈まない可能性がある。
金融緩和は続く(実質金利マイナス)。
財政は拡張的(財政再建への反発は大きい)。
こういう環境では、バブルまで含めて様々なことが起こりうる。
大切なのは(有り金)全部買わない、(保有資産)全部売らない、に尽きる。