【Wonkish】米国債格下げで気になるコト
そうだとしても国際投資の観点から1つ気になっていることがある。
それは、世界のリスクフリー金利のベンチマークが消えてしまったのではないかとの心配だ。
厚い市場を持つリスクフリー資産の格下げ
債券ファンド大手PIMCOはこう書いている。
米国債は引き続きリスクフリー資産のベンチマークであり、世界の金融市場全体の基準点であり続けます。
PIMCOは米国債が変わらずリスクフリーのベンチマークだと書いている。
でも、AAAじゃなくAA+でしょ。
もっとも、実務家のほとんどは日本のリスクフリー金利として10年国債利回りを使っていると思う。
日本の格付はAだから、これも本来は少しおかしな話なのだ。
かつて、南米などで国家の信用度が低下した時、そうした市場でのリスクフリー金利に何を使うべきかとの議論があった。
そうした国の国債はとてもリスクフリーとは言えなかったのだ。
1つの考え方は、その通貨建てのインターバンク市場における、信用度の高い米銀の調達金利を用いるといったものだ。
国家の信用力に陰りがあると、リスクフリー金利1つにしても面倒な検討が必要になるのだ。
世界のリスク・ゼロの基準点が失われた
なぜこんなマニアックな心配をするのかといえば、国際投資を考える上でのサニティ・チェック(現実味のチェック)に影響するからだ。
いつも私たちは異なる国の資産に対して異なるリスクフリー金利を用いている。
通常は現地の長期金利を用いる。
個々の市場を見る上では妥当なのかもしれないが、国際投資を考える上ではどうだろう。
国際投資には国別の比較という要素が入る。
各国のリスクフリー金利の間の整合性はとれているだろうか。
とれていないなら、間違ったリスクフリー金利を用いている可能性を疑ってみるべきだ。
財政に負担がかかるにしたがい、リスクフリー資産のリスクが高まっている。
これまでリスクがゼロとみなせていた米国債までそうした流れにあるように見える。
リスク・ゼロという基準点を失って頭を掻いているマニアもいるのではないか。