オルカンの時代!? まあとりあえず聞いてみよう
エモリー大学のAizhan Anarkulova氏らによるライフサイクル投資に関する論文が注目を浴びている。
個人投資家にとって重要なテーマを扱っており、概略を紹介しよう。
老後資金のための投資をどのような配分で行うべきか、シミュレーション計算を行ったもの。
米社会・市場の現実を少し反映した前提を用いやや精緻なことをやっているらしい。
(逆に言うと、特にリターンの時系列の置き方に結果が依存するとも書かれている。)
同論文では、多少の差こそあれ大きなメッセージは他国の投資家にも当てはまるだろうと示唆している。
論文(P.34)では、8つの配分例を挙げている。
ここでは3つに注目したい。
- Balanced: 米国株60%、債券40%
- Stocks: 米国株100%
- Stocks/I: 米国株50%、外国株50%
これらについてシミュレーションした退職時の資産額、現役時・引退後の最大ドローダウン額は以下のとおり(平均値、百万ドル):
配分 | 退職時資産 | 現役時ドローダウン | 引退後ドローダウン |
Balanced | 0.76 | 0.54 | 0.49 |
Stocks | 1.05 | 0.68 | 0.63 |
Stocks/I | 1.07 | 0.57 | 0.50 |
(シミュレーションの手法上、絶対値でなく相対値を見るべきもの。)
メッセージは明らかだ。
米国で従来推奨されてきた60/40ポートフォリオよりも、100%米国株や(米国株+外国株)の方が平均リターンが大幅によい。
さらに、米国株100%より(米国株+外国株)の方がリスク低減が効いている。
(米国株+外国株)では、60/40ポートフォリオと大差ない。
米国株を柱とする場合、債券で分散するより、外国株で分散した方がよいというようにも受け取れる。
どちらでも分散効果は同程度で、外国株ではβに対応するリターンがとれるという解釈かもしれない。
最近流行りのオルカンを後押しするような結果は少々気味が悪いが、これはこれで1つの計算結果なのだ。
論文の著者は、Stock/Iのドローダウンが投資家に痛みを与えることを認めた上で、それでも(確定拠出年金の適格デフォルト選択肢のような)株式+債券のミックスでは失うものが大きいと指摘する。
オール株式戦略を財務アドバイスや年金の規制上の選択肢に加えるよう求めている。
その上で、ドローダウンの課題軽減策を提案している。
「私たちは短期的損失のコスト軽減のための代替的アプローチとして、ファイナンス教育の継続コース、長期視点重視の退職金口座報告基準、長期に集中した退職貯蓄者支援を求めたい。」
投資家が怖気づいて逃げ出さないようにとの工夫だ。
投資というのは、最後には気の持ちようが大切なのだろう。