インフレ対策としてのNISA・iDeCo

今年から新型NISAが開始され、iDeCoと合わせて、非課税投資制度が注目されている。
少々細かい話になるが、これら非課税制度が一部インフレ対策に役立つ点を説明しよう。

ポイントは簡単だ。
インフレは税負担を大きくし、購買力を減じてしまうということ。


実質リターンに違いがなくても、インフレにより名目リターンが大きくなると、名目リターンから計算される税金が増えてしまう。
実質リターンに違いがなければ、価値の増分は同じはずなのに、税金の差の分だけ違いが出てしまう。
インフレ時代は、この点だけを見れば、投資家に不利に働いてしまうのだ。

細かすぎると思うなかれ。
両制度とも基本的に長期投資を推奨する制度だ。
これが20年の投資なら20倍(+少額ながら複利分)が効いてくることになる。

(もちろん同様のことは、リターンの概念のない資産税でも尖鋭に効いてくる。
当局はディスインフレ時代に取り漏れた分を取り返そうと息巻いているだろう。)

さらに用心しておくべきは、上記設例の妥当性だ。
上の例ではインフレになっても実質リターンは変わらないと仮定してある。
これは妥当だろうか。

まず、金融面を見ると、金融危機以降各国が金融緩和を行った理由はゼロ金利制約に捕まったためだ。
名目の政策金利をゼロ以下にするのに限界があるため、名目金利ではなく、実質金利を引き下げようとした。
インフレを上昇させることで実質金利を引き下げようとしたのだ。
そして、日銀を見る限り、リスクフリー金利だけでなくリスクプレミアムまで縮小しようとした。
政策変更を行った現在も、金融環境を緩和的に保つと示唆している。
過去を見る限り、インフレが上昇する時、実質金利が維持されるかどうかはわからない。
(パンデミックでインフレが上昇した局面、日本の実質金利は低下し、一服した今もマイナスのままだ。)

もっと生々しい話は政府の債務負担にある。
借金漬けの政府にとっては低い実質金利、あるいはマイナスの実質金利は都合がよい。
インフレで借金の価値を減らす≒マイナスの実質金利で借金の増加を避ける、という選択は政府側からすれば当然の考え方だろう。
(反対側から読めば、国債、預金、円の保有者の負担になるということ。)

こう考えると、円資産について実質リターンを楽観視してはいけないとの考えに行き当たる。
あまり悲観すべきではないだろうが、楽観すべきでもないだろう。

おさらいすると、インフレは税金を増やす効果がある。
税金をたくさん納めるのが喜びの人は、大いに喜べばよい。
(素直に賞賛したい。)
そこまでリッチじゃないと思うなら、せめてNISAやiDeCoは使っておこう。

1つ注意すべきは、高値でこうした制度を使うことが不利に働くことがあることだ。
これら非課税制度は税務上の利益が出る場合にのみ有利になる。
逆に損失が出る場合、不利になることもある。
通常の口座なら他の益と損益通算に使えるが、非課税講座では通常の口座との損益通算はできない。
だから、短期的に損切りを迫られそうにない投資先を探すのが重要だ。