【輪郭】ちょっとバブルを心配した方がいいかも

2. 人を引きずり込む

過去十数年、投資家は金融・財政政策の下駄を履かせてもらってきた。
悪い言い方をすれば、頭がよくないほど儲かる相場だった。
分散もヘッジもせずに、ただただインデックスにレバレッジをかければ一番儲かったのだ。

そんな中たまたま勝ってうれしくなって吹聴したら、聞いていた初心者が真に受けてしまった。
あるいは、良かれと思い、家族・親類・友人にリスク投資を奨め、あまつさえ手取り足取りやり方を教えるかもしれない。
似たような光景は1980年代後半にも、1990年代終わりにもあった。

結果は知ってのとおり。
特に、家族で似たことをやれば、家族としての分散も効かず、家族全員そろって貧しくなってしまう。

弊社のような情報発信をする組織・人間にも言えること。

「超低金利では(それを補うべく)リスクプレミアムをとるためリスク資産に長期投資すべき。」
「2%インフレでは円の現預金の投資価値は目減りするからリスク資産を買え。」

いずれも正しいし、そう信じて主張を続けている。
しかし、それを単純に受け取って、時期も手段も熟慮しないなら、必ずしもよい結果を生むとは限らない。
《時期も手段も熟慮しない》とは例えば、高値から始めるインデックスのドルコスト法なのではないか。

初心者はそれを理解しているだろうか。
いや、あるいは、真摯にインデックス投資やドルコスト法を学んで選択した投資家は、起こりうる様々な結末を理解できているだろうか。

あるテレビ・チャンネルのニュース番組が微笑ましい。
さんざん銘柄を推奨した上で、最後に「推奨ではありません。投資は自己責任で」と免責事項を述べる。
確かに投資とは自己責任が大原則だ。
しかし、失われた10年に苦しんだ者から言えば、当時は自己責任の一言で片づけられない時代だった。

リスクテイクは続けなければいけない

誤解しないでほしいのは、私たちはリスクオフを奨めるつもりは毛頭ない。
もう少し踏み込めば、投資や投機に絶対の正解などない。
各人が最適の手法を考え、実践することが正解だと思っている。

筆者は自分たちが拙い投資家であることを認識している。
だからバランス型の投資を選択した。
バランス型の投資は予想を必要としない。
下がれば買い、上がれば売る。
Buy low, sell highを続けるだけだ。
現実を後追いする手法だ。
そのかわりに、額に汗して銘柄選別に勤しんでいる。

では何が言いたかったかと言えば、油断をするな、ということに尽きる。
相場とは長く上昇し、短く急落する傾向がある。
急落の直前、たくさんの人がいい気持ちになっていて、水面下で一部不安がささやかれるとの観察もある。
今がそうでないとは限らないということ。

基本的に相場は上がるものだから、逃げてはいけないと自分に言い聞かせている。
しかし、上がることを前提に考えるのはひどく危うい。
うかつに買って人生を台無しにする人は多いが、買わないでチャンスを逸しても人生は台無しにはならない。
投資を続けつつ、ミニマックス戦略を忘れてはいけない。


山田泰史山田 泰史
横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部化学科卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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