「ウォーレン・バフェットがS&P 500をすべて売った」という巧妙な騙し
ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイが14日に提出した13Fについて、少し奇妙な現象が見られた。
一部メディアが「ウォーレン・バフェットがS&P 500をすべて売った」と騒いだのだ。
その多くが、この売却の理由を、バフェット氏が市場下落を予想したためと推測していた。
彼らの主張はこんな感じだ:
(a) 売却はバフェット氏による市場下落予想のサイン。
(b) 従来からS&P 500投資を推奨していたバフェット氏による売却は事態の深刻さを示している。
(c) いわゆるバフェット指標(株式市場の時価総額÷GDP)も割高を指している。
では、ファクトはどうだったのか:
- バークシャーは2019年にS&P 500連動ETFを2銘柄買っている。
- 最初に13Fに登場したのが同年12月末の報告書。
- 最後に記載されたのが2024年9月末の13F。
- つまり、昨年第4四半期中に売却している。
- 保有期間を通して、持ち株数に変化は見られない。
つまり、「ウォーレン・バフェットがS&P 500をすべて売った」というフレーズに嘘はないことになる。
問題は、その金額だ。
今回の売却とは、昨年9月末時点での13F報告対象金額に対しわずか0.017%の資産を売ったにすぎない。
バークシャーがリスクオフに努めていることは事実だが、このわずか0.017%を取り出して議論するのはあまりにも奇妙だ。
つまり(a)の根拠として、この0.017%は不適切だ。
(b)についてもこじつけがひどすぎる。
バフェット氏は自身が重んじる投資手法としてインデックス投資を挙げたことはないはずだ。
インデックス投資は、銘柄選別を徹底できないアマチュア投資家に対するアドバイスである。
(c)についてはもはやデマに近い。
バフェット氏は(弊社の知る限り)もはやバフェット指標で株価水準を語っていない。
米企業の国際化が進み、国際的数字を国内の数字で割ることに理論的正当性がなくなっているためと思われる。
つまり、もはやバフェット指標など俎上に上げることすらミスリーディングなのである。
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