【Wonkish】アスワス・ダモダラン教授のスプレッドシートを読んでみよう
アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が継続的に公表しているS&P 500に内包されている株式リスクプレミアムについて、計算過程を見てみよう。
一般的に株価指数に内包されている、いわゆるインプライド株式リスクプレミアムを目の子計算するには、PERの逆数、つまり益回りを用いることが多い。
益回りから実質リスクフリー金利を差し引いたものをインプライド株式リスクプレミアムとするものだ。
例えばPERが21倍だとすれば、益回りは4.8%。
10年物物価連動債利回りが1.8%だとすれば、株式リスクプレミアムは3.0%と計算される。
ただし、PERについてはその信頼性に対し批判も多い。
その1つの表れがCAPEレシオだ。
現時点の株価の水準を見るためのPER計算に、ある一時点のEPSを使うのは不適切との指摘だ。
このため、ロバート・シラー教授はEPSの10年平均を取り、さらにインフレ調整を施している。
教授は、CAPEレシオから計算した株式リスクプレミアムを「超過CAPE利回り」と呼んでいる。
ちなみに、シラー教授による今年2月のCAPEレシオは36倍、超過CAPE利回りは1.7%だ。
ダモダラン教授もPERを重視しない派だ。
「PERはなまくら刀」と酷評している。
そして《バリュエーション学長》は丁寧にDCFを計算するのである。
教授のDCFの変数は
- 足元のEPS: 市場予想
- 当初5年のEPS成長率: 市場予想のCAGR
- 6年以降の成長率: 長期金利と等しいと仮定
- 株式へのキャッシュフロー: EPS × 総還元利回り実績
- リスクフリー金利: 米10年債利回り
- 株式リスクプレミアム: これを求めたい
これら変数から足元のS&P 500指数が計算されてくる。
そうなる株式リスクプレミアムがインプライド株式リスクプレミアムというわけだ。
ダモダラン教授がPERを「なまくら刀」とこき下ろすのも理解できる。
DCFを最も理論的な価値評価のあり方と認める限り、教授のやり方は最善の方法といえるわけだ。
そのダモダラン教授による計算では、4月1日のインプライド株式プレミアムは4.6%だ。
結果の数字を見てどれが正しいか選ぶのは適切でないかもしれないが、あえて確からしそうな順位を考えてみよう。
シラー教授による数字は一番分が悪いように思われる。
この計算では実績EPSを用いており、将来の成長を織り込んでいない。
結果、CAPEはPERより高く、逆数を取ると小さくなり、リスクプレミアムも小さくなる傾向がある。
(ただし、これは絶対値の話だ。
この数字を時系列で見るなら、相応の価値があるといえよう。)
PERと益回りによる方法は、1年分の予想を用いている点で将来予想もいくぶん含んでいる。
それに比べ、ダモダラン教授の方法は(単純化した仮定とはいえ)無限期間の成長を織り込んでいる。
(次ページ: このインプライド株式プレミアムは大きいか? 小さいか?)