国債暴落のシナリオ検証(2)日本国はいったいいくら踏み倒せばいいのか

トロイカ(ECB、欧州委員会、IMF)によるギリシャへの追加支援が固まった。
ギリシャの財政収支、国家債務については、とりあえずの応急処置がなされるということだろう。

不均衡の淵の対岸にいて苦しむギリシャと日本

ギリシャ問題はすぐさま解決するというわけではない。
目先の債務問題を乗り切っても、EU内の経済の不均衡には何も手当がなされていない。
このまま共通通貨を続けるならば、再び一方通行の資金の循環が起こるだろう。
それが政府債務にならなくとも、再びギリシャ経済に大きな問題を起こすことになる。

日本はどうだろう。
少々米国の経済統計がよくなり、日銀が量的緩和を進めたから、円安にふれた。
それを大喜びしている政府・政治家にはあきれるばかりだ。
いまだに輸出頼みの経済成長しか知恵がない。
日本はギリシャとは世界経済の不均衡の淵の対岸にいあわせている。
日本が輸出立国を続ければ、日本経済のリスクは高まっていく。

日本の政府債務は1,000兆円超、ネットでも600兆円超

指導者たちに知恵がない以上、世界経済の不均衡を一気に解消するのは不可能と見るしかない。
ならば、日本にとっての応急処置とはなんなのだろう。
その可否こそ、日本国債の暴落を占うものになる。
それを議論する前に、日本の金融資産の流れを見てみよう。

2011年9月末の資金循環勘定から、各部門の金融資産・負債を見ると、

政府のネット政府債務610兆円を民間から召し上げる

一般政府のネット金融負債610兆円を返済したい。
そのために個人・法人の資金を吸い上げたい。
もちろん、金融機関や年金から収奪することもありうるが、それは結局は個人・法人に付け回されるだけの違いに過ぎない。
また、残念なことに日本国債の投資家はほとんどが日本人なので、外国人からの借金を踏み倒すことのメリットは小さい。

どのお金が610兆円を埋める原資となろうか。
 ・家計(除く年金)の金融資産1,050兆円
 ・非金融法人の金融資産754兆円
いずれも負債とネットはしていない。
これは、ある人は金融資産を圧倒的に多く持っていて、ある人は金融債務を圧倒的に多く持っているだろうからだ。

民間の金融資産からその1/3を収奪する

もちろん原資に金融資産以外の資産を含めることもありうるだろう。
戦後の財産税はそうだった。
(1)では財産税はあながち悪い選択ではないと述べたが、その手続きはいささかやっかいだ。
まず政府が目指すのは、金融資産への(実質的)課税であろう。
つまりは家計と非金融法人の金融資産の合計1,804兆円から610兆円を減じるような手段を講じればいいことになる。

実際には、政府の純債務のすべてを消す必要はないだろうから、もう少し収奪の幅は小さくてすむだろう。
そこまで理解すると、興味の対象はHowに移る。

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