日本版ESOP
ESOPとはEmployee Stock Ownership Planの略。
米国で採用されている従業員による持株制度である。
米国では、借入を用いて株式を購入するESOPが一般的であり、これをレバレッジESOPと呼ぶ。
レバレッジESOPは設定当初から多額の株式を購入するため、会社からすれば、安定株主の確保につながる。
また、持株会の購入する株式のうち、当初に取得する分については、その時点で取得価格が決定するメリットもある。
日本の持株会との相違
日本にも、従業員持株会という制度がある。
これは、従業員が毎月の給与から定額を天引きにして、勤務先企業の株を購入する制度。
会社補助のある貯蓄制度である。
加入するかどうかは、従業員の希望であり、購入した株式は持株会が一括して所有する。
購入する株式の価格は、毎月の市場価格によって変動することになる。
企業からは、福利厚生の一環として、購入資金に補助が出ることが多い。
一方、現在、新聞紙上等で「日本版ESOP」と呼ばれているものは、信託や中間法人を設定して、持株会が購入する株式を事前に取得させるレバレッジESOPを指しているようだ。
信託を用いるスキームの概要は、
・企業が信託を設定
・信託が借入を行い、株式を購入
信託の借入には、会社から債務保証を行う
購入する株式は企業から金庫株が譲渡される
・従業員が毎月の給与から持株会に現金を拠出
・持株会が信託から毎月株式を購入
信託は譲渡代金で借入を返済
である。
資金を拠出するのは従業員であるという意味で、先述の従業員持株会と同じ構図だ。
米国のESOPとの相違
米国のESOPは、従業員全員を対象とした、確定拠出型退職給付制度である。
したがって、退職まで、引き出すことはできない。
米国のESOPは従業員の報酬制度であり、企業の拠出は損金扱いになる。
会計上の取扱い
米国では、ESOPを連結するルール。
つまり、資産にESOP保有株式、負債にESOPの債務が計上される。
日本版ESOPでは、会計上の取り扱いに曖昧さがある。
信託や中間法人が借入を行い、それを会社が保証するため、この信託や中間法人を連結対象とすべきかとの議論になる。
ESOPの性格が日米で異なるため、米国の制度を援用すればよいというものではない。
連結するならば、連結貸借対照表の資産の部に金庫株が計上されることになる。
この日本版ESOPの金庫株は、通常の金庫株とは異なり、配当請求権を有する。