実質金利としての代用やブレークイーブン・インフレ率(BEI)の計算に使われる物価連動国債について、月末の期間別の流通利回りを推計した。
推計の基礎となるデータは、
- 発行条件: 財務省、国債関係諸資料、国債の入札結果
- 連動係数: 財務省、物価連動国債(10年)の適用指数及び連動係数
- 流通価格: 日本証券業協会、売買参考統計値/格付マトリクス
極めて粗い推計であることを留意されたい。
なお、固定金利の国債利回りの期間別時系列データは、
国債の流通利回りの時系列データ(月次・暦年・年度)
を参照されたい。
2014年9月頃より、償還間近の銘柄を中心に、計算される流通利回りが債券利回りとして明らかに不適当と見られるデータ点が発生した。
原因は明らかではないが、
・1年後に消費増税が控えていたこと
・10月末に消費増税の延期が決まったこと
・そもそも物価連動国債の市場には厚みがないこと
・残存の短い債券ではそのような影響が強く出ること
などが影響しているものと見られる。
従前は明らかに不合理なデータ点のみを無視してイールド・カーブを計算してきたが、次第にこの影響が広範囲にわたるようになった。
そのため、計算方法を12月度より変更し、遡及修正している。
具体的には、異常値のデータ点を無視するのではなく、そのようなデータ点の影響を受ける年限の利回りを計算しないこととした。
(2013/10/31備考)
2013年10月より物価連動国債の発行が再開した。
結果、5年以下の利回りの他、10年もの利回りが計算できることとなった。
これにともない、欠けている6年から9年ものについて、補間により推計することとした。
(2013/2/28備考)
2013年1月度まで全期間(4年半)のデータを用い単回帰分析してイールド・カーブを計算していたが、2月度より方法を変更した。
各期間の近傍のデータのみを抽出し、単回帰分析することとした。
(2012/2/13備考)
日本の物価連動国債は2004年から約4年半ほどの間に16回発行されたが、その後途絶えている。
市場の厚みは他の国債ほどなく、16銘柄でイールド・カーブを描いても、驚くほどにいびつなものとなる。
そのため、期間別の推計もあえて単回帰分析にとどめたが、それでも「蛮勇を奮った」という感が強い。
推計値の有効数字にしても、%にして小数1桁もないといった印象を受けた。
(2019/8備考)
サンフランシスコ連銀が2016年の日本のマイナス金利政策導入について研究した論文で、日本の物価連動国債利回りを検証している。
そこでは同利回りをそのまま実質金利の近似値とするのではなく、インフレ・リスクプレミアムと物価連動国債の価格フロアの効果まで推計している。
特にリスクプレミアムなどは中央銀行が好む議論であるが、源データの精度に比べて精緻すぎるかもしれないこうした手法には疑問の声も多い。